話題の日本代表オフィシャルスーツと五輪公式スーツにまつわる開発秘話

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近年のアスリートは、競技中だけでなくオフタイムも注目されます。
それはファッションにおいても同様で、スポーツウェア以外のプライベートファッションやオフタイム用のオフィシャルユニフォームも話題となります。
なかでも、特に注目されているのがサッカーワールドカップやワールドベースボールクラシック、オリンピックなどの大舞台で選手たちが着用するスーツです。
ここでは、注目度の高い競技でどのようなスーツが着られているのか、また、スーツにまつわる開発の裏話を紹介しましょう。

話題騒然のサッカー日本代表オフィシャルスーツ

アスリートのオフィシャルスーツと聞いて真っ先に思いつくのは、サッカー日本代表ではないでしょうか。
スーツを着た代表メンバーの集合写真に、「かっこいい」「イケメンすぎる」とコメントが殺到するネット上の様子は、毎年の恒例行事のようになっています。
直近モデルのオフィシャルスーツは、正確にいえばジャケットとトラウザーズの組み合わせで、2000年から毎年サッカー日本代表にオフィシャルスーツを提供し続けてきた英国ダンヒル社製です。
英国では仕立ての総称を「MADE TO MAESURE」と呼び、完璧にフィットするスーツを身に付けることを紳士の美学としてきました。
この伝統と、競技や勝負を意味するMATCHを掛け合わせた「MADE TO MATCH」のコンセプトをベースに、熟練したフィッターにより選手一人ひとりを綿密に採寸し、鍛え上げたアスリートたちの体にフィットするよう約8週間を費やして完璧なシルエットに仕上げています。
ジャケットはネイビーベースで、シルエットは英国らしいクラシックなセントジェームスフィットが採用されています。トラウザーズはチャコールグレイで、上下で織りに統一感を持たせることで洗練されたスタイルに仕上がっています。

各国のサッカー代表オフィシャルスーツ

日本以外でも、サッカー代表のオフィシャルスーツを発表している国が多くあります。メジャーなところを紹介しましょう。

英国代表のオフィシャルスーツ

スーツ発祥の国、イングランド代表のオフィシャルスーツは、有名テーラーのものではなく、意外にも小売業のマークス&スペンサーが提供するものです。質実剛健なデザインで、価格もリーズナブルに抑えられています。

イタリア代表のオフィシャルスーツ

イタリア代表のオフィシャルスーツは、世界を代表するラグジュアリーブランドのドルチェ&ガッバーナ製のスーツです。
特に2014年モデルは「かっこよすぎ!」と大好評でしたが、選手一人ひとりにあつらえた特注品で、市販はされていません。たとえ販売されたとしても、一般にはとても手が出せないほどの高額だっただろうといわれています。

フランス代表のオフィシャルスーツ

フランス代表のオフィシャルスーツで有名なものは、フランスのNo.1テーラーである、フランチェスコ・スマルト製のスーツで、同社が2016年まで手がけていました。
各国の大統領や国王など世界中のVIPに愛される高級テーラーだけに、当時販売されたオフィシャルスーツも90万円以上と破格でした。

スポーツの最高峰・オリンピックのスーツ

サッカーワールドカップ以外にも、ワールドベースボールクラシック、水球、ラグビー、陸上などさまざまなオフィシャルスーツがありますが、最高の舞台はやはり、オリンピックでしょう。
日本代表団が着るオフィシャルスーツは「選手団公式服装」といいますが、その多くは式典用男女、渡航用男女の種類があり、オリンピックごとに異なるコンセプトで作られてきました。
ここでは、近年のオリンピックでどんなスーツが登場したかを振り返ってみます。

2012年ロンドンオリンピックのスーツ

ここでは、メイドインジャパンにこだわり、最新の機能性素材を取り入れられました。
開会式・式典用のジャケットには2WAストレッチニット素材を、スラックスには防汚加工式の素材を採用しています。
渡航用の服装は、日本とロンドンの気候を考慮し、どちらも快適に過ごせる素材が使われました。

2014年ソチオリンピックのスーツ

「日本選手の活躍を彩る“勝負服”」などをテーマに開発されています。
式典用・渡航用ともに、ジャケットは品位・知性・無限の可能性などを表現したグレーがベースカラーです。
男性には「勝ち色」とされる紺色を、女性には愛と平和を連想させるさくら色を使用しました。
男女共通ジャケットの内側にナショナルフラッグの赤を使ったパイピングを入れたり、渡航用のポロシャツはきちんとした印象を保つためボタンダウン、袖口はカフス仕様、などの特徴がありました。

2016年リオデジャネイロオリンピックのスーツ

全体のコンセプトは「情熱~真紅に宿る、太陽の熱量をちからに」で、式典用のジャケットは真紅、差し色としてネクタイ・リボンタイに「勝ち色」の紺をプラスしています。
渡航用は紺に白いストライプのジャケットとライトブルーのスリムスラックスのセットアップです。
式典用・渡航用、どちらのジャケットもシワになりにくい素材を採用し、渡航用スラックスでは接触冷感に優れた素材を採用するなど、現地の気候を考慮した仕様になっていました。

2018年平昌オリンピックのスーツ

コンセプトは「輝け!今を駆け抜ける、勇者たち」で、ニュークラシックと快適性を追求した、ブレザースタイルが選ばれています。
上着はシングル・ダブルの2種を、パンツはスリム・ワンタックの2種を用意し、選手が選べるオーダーシステムを採用しています。
「楽動」をテーマに楽に動けるオリジナルニットを採用し、日本性素材・日本縫製にもこだわりました。

アスリートのスーツから誕生した画期的なシャツの物語

オリンピックという晴れの舞台では、最先端の技術が使われた革命的な競技用ユニフォームが登場し、話題をさらうことがあります。
2008年の北京オリンピックの競泳で次々と世界記録を塗り替えた高速水着などは有名です。

オリンピックに向けて革命的なモデルの開発に勢力を注ぐのは、何もスポーツウェア業界だけではありません。
各オリンピックでオフィシャルスーツを提供するアパレル企業も、開会までに自社の英知を結集し、その時点で最先端のスーツを生み出してきました。
実は、その最先端技術を市販品に応用し、ヒット商品になっている例があるのをご存知でしょうか?
北京オリンピックでオフィシャルパートナーを務めたはるやま商事が、日本選手団のために作った服装から生まれた「i-Shirt」などはその代表です。

当時、はるやま商事は、日本オリンピック委員会(JOC)から「シワになりにくく吸水速乾性に優れた、アスリートにとって着やすいシャツが欲しい」とリクエストされていました。
このリクエストに応えるには、原材料や製造法まで見直さなければなりません。ゼロからさまざまな検討を行った結果、ストレッチ性を重視し、サッカー日本代表のユニフォームと同じポリエステル製のニット生地を使うという方向性を打ち出しました。
しかし、ユニフォームのように薄く透けるシャツにするわけにはいきません。理想を実現化するために新たな糸を開発するものの、それでシャツをどう作ればいいのか誰もわからず、模索が続きました。

試行錯誤の末、市販品として完成した「i-Shirt」は20009年に市場で販売を開始しますが、当時は「厚ぼったい」「蒸れる」などいくつもの問題を指摘され、さらなる改良に取り組みます。

そして2014年、優れた形態安定性による完全ノーアイロンに消臭機能を追加した「i-Shirt」は、ついに累計販売数50万枚を達成し、2018年時点で200万枚を突破しました。

舞台裏を知ることでスポーツもファッションもより楽しめる

スポーツの祭典という華やかな舞台の裏では、アパレル業界のさまざまなドラマも展開されています。そんな舞台裏を知ったうえでオリンピックや世界大会を観れば、また違った楽しみを味わうことができるはずです。
今後のラグビーワールドカップ、そして、東京オリンピックというビッグイベントではどんなスーツが登場するのか、今から楽しみですね。

 

参考: